「日本人は原発とどうつきあうべきか」

田原総一朗の本。脱原発の風潮に反発して、いわゆる推進派の人たちばかり取材した本。やっぱりどうしても脱原発本ばかり読みがちだし事故後推進派に取材したものをみるのは初めてなので企画は斬新に感じそれなりに面白かったが、まあ、はっきり言ってこの人の原発問題に対するレベルはかなり低い。この世代の人たちにありがちなことだが、無意識に反体制は左翼、体制派は右翼と分類し、ジャーナリストは基本的に左翼だが、今左翼が反原発で勢力を伸ばしているので、自分は右翼になってみる、みたいなところがある。つまり分類も考察もあまりにも単純で雑なのだ。確かに今、推進派の人たちの意見を聞く人はいないのでそういう人たちの意見を伝えることは意味あることだと思うが、脱原発論は思ってるほど感情的でもないし、無知でもないし、単純でもない。かなり昔から原発を取材していたはずの人なのにそんなことも認識しておらずがっかりである。脱原発に向かう方法はいろいろ考えられるわけであり、2,3の論が否定されたからといって原発が必要という議論にはならない。また、現状の脱原発論は必ずしも原発廃止を目的とするのではなく、原発既得権体制を破壊するのが目的という人もいるだろう。管理体制を問題とする人もいる。この人は省エネを夢がないと切り捨てているが、省エネだって有望なフロンティアだ。原発新規建設だって福島第一の横に建てるのは可能なはずだ。なんといってもすでに避難が済んでいるのだから。こういった様々な問題をみておらず新たな視点も提供していない。マスコミ的ジャーナリストのレベルの低さをあらためて認識してしまう。

日本人は原発とどうつきあうべきか

日本人は原発とどうつきあうべきか