「今こそ原子力推進に舵を切れ」

WEDGEという雑誌の記事を電子書籍にしたもの。100円。WEDGEという雑誌は知らなかったがJR東海の広報誌のようなものらしい。kioskにポスターが貼ってあったりするし、新幹線のグリーン車にはタダでおいてあったりするようだ。JR東海の社長は原子力を擁護しているので雑誌の主張もそれに沿っているのだろう。読んでみたが、言っていることはわかる。原子力のメリットがいろいろあるのは確かだ。だから事故があったからといって原子力を捨てるべきではないという主張はわかる。そして事故の対策により津波に対して安全性が従来の1000倍になったという主張も正しいかも知れない。しかし、逆に言えばこれまで原発を運営してきた国と電力会社は今より1000倍危険であったものを見逃していたということだ。その能力不足や価値観が問題だ。鎖の強度は一番弱い輪で決まる。今回津波対応の輪が弱くてそこを1000倍に補強しても次に弱い輪が1.1倍しか強くなかったら次はそこが事故を起こす。常に一番弱い輪を探し出す努力が必要なのだ。これまで原発安全神話を守るため弱い輪を発見してもそれを公表することもなく対策もしなかった。そういう隠蔽体質こそ安全の敵である。東京電力ですらまだ隠蔽体質が残っているのに他の電力会社からなくなったとは思えない。本当に原子力を推進したいのならもう少し掘り下げた推進策が必要だろうし、その矛先は脱原発派ではなく電力会社や国の体制をどうするかということになるはずなのだ。しかしここまで強硬に原子力を擁護されると新幹線に乗るのもちょっと考えてしまう。とはいえ選択肢はないのだが。実は特集の中のどうして事故がおきたかを解説している記事はけっこういい出来と思う。あそこの部分だけ発展させて一冊にしてもらいたいものだ。

今こそ原子力推進に舵を切れ WEDGEセレクション

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