「死の淵を見た男」

福島原発事故時の吉田所長らの事故対応を追ったドキュメント。思ったより吉田所長の比率は低い。特に目新しい内容はなかった。池田信夫なんかは月100mSVまで大丈夫なんて言ったりするが、現場の人も100mSVレベルでも十分怖がっていることがわかる。日本がどうなるかというときに100mSVくらい恐れるなよと言いたくなって来る。この本は原発に対して推進でも反対でもないと前書きにあるが、反菅ではあるようだ。菅総理はまわりのいうことを聞かずわめきちらし、地震対応で他にもすべきことが多い中、混乱のさなかにある福島原発を視察するという暴挙にでた、それはイラ菅が悪いのだという書き方だ。そうではないだろう。菅総理は吉田所長に会って、彼にまかせれば大丈夫という確信を得た。逆に言えば保安院東京電力本店も原子力安全委員会もまかせて大丈夫そうな人がいなかったということである。菅総理弁理士である。技術を理解する頭脳はもっているはずだ。その頭脳を納得させることのできる頭脳がまわりに誰もいなかったということが問題である。終わりの方に吉田所長の想定する最悪事態というのがでてくる。格納容器が爆発したら、誰も近づけなくなり、福島第一、第二の全部がメルトダウンし、チェルノブイリの10倍の放射能が放出されるというものだ。この危機感を持ったものが菅総理と吉田所長の間に誰もいなかったのか。まったく日本って国はどうなっているんだ。菅総理ならずとも叫びたくなるだろう。この本の後半は読む気がしなかったので結構飛ばした。自衛隊が立派だとか記述がでてくるが、自衛隊自身がいうように自衛隊としては当たり前の行動だろう。危機のとき活躍しなくていつ活躍するのだ。さらに言えば自衛隊には対核専門部隊ぐらいあるべきだろう。東京電力が本気で撤退したときなんとかする部隊が必要だし、北朝鮮から核が飛んでくるかも知れないのだから。